目次
1.なぜ石綿調査が義務化されているのか?
1-1.石綿(アスベスト)とは?
天然に存在する鉱物繊維で、数千年にわたってさまざまな用途に使用されてきました。耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性に優れているため、特に20世紀中盤から後半にかけて建築材料や工業製品に広く利用されました。しかし、その微細な繊維が人体に有害であることが判明し、現在では多くの国で使用が禁止されています。種類としては、蛇紋石族と角閃石族に大別され、6種類があります。そのうち、日本で使用された代表的な石綿は、蛇紋石族の白石綿(クリソタイル)と角閃石族の茶石綿(アモサイト)、青石綿(クロシドライト)です。

1-2. 石綿調査の目的
石綿とは前項で記したように人体に有害なものです。すでに建築材料などとして用いられた石綿についても、その建築物の解体や改修等の建物に何らかの変更を与える際には石綿が飛び散ることによる人体への影響を最小限に抑えるために、大気汚染防止法やその施行規則などによって、石綿調査が義務付けられています。
1-3.規制強化の経緯
【1975年(昭和50年)特定化学物質等障害予防規則の改正】
アスベスト含有率が5%を超える場合、吹き付け作業が禁止されました。つまり5%未満であれば、吹き付け作業は許容されていたことになります。
【1986年(昭和61年)ILOアスベスト条約の採択】
クリソタイル(白石綿)は管理使用の対象とし、クロシドライト(青石綿)の使用と吹き付け作業の禁止を指導されました。しかし、日本では変わらず使用及び製造が続けられました。
【1995年(平成7年)労働安全衛生法施行令改正、特定化学物質等障害予防規則改正】
アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)の製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止されました。さらにアスベスト含有率が1%を超えるものの吹き付け作業が禁止されました。つまり1%以下の吹き付け作業やクリソタイル(白石綿)の使用は許容されていたことになります。
【2004年(平成16年)労働安全衛生法施行令改正】
代替が困難なものを除くすべてのアスベスト製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。しかし、重量の1%以下を含有するクリソタイル(白石綿)は認められています。
【2006(平成18年)労働安全衛生法施行令改正】
アスベスト含有率が0.1%を超えるものの製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止されました。
2.どのような建物・工事が対象になるのか?
2-1.調査義務が発生する建築物の種類
全ての建築物が対象で、その中一定規模以上(解体部分の床面積が80㎡以上、改修:請負金額が税込100万円以上)工事はあらかじめ施工業者が労働基準監督署と自治体に対して、事前調査結果の報告を行ことが義務化されました。建築物の改修工事とは、建築物に現存する材料に何らかの変更を加える工事であって、建築物の解体工事以外のものをいい、リフォーム、修繕、各種設備工事、塗装や外壁補修等であって既存の躯体の一部の除去・切断・破砕・研磨・穿孔(穴開け)等を伴うものを含みます。

2-2.対象建材とその特徴
木材、金属、石、ガラスの素材は全てアスベストの含有が疑われる建材となります。主な建材が下記となります。
【吹き付けアスベスト】
アスベスト(石綿)をセメントや石膏などの結合材と混ぜ、スプレー状にして建物の天井や壁、鉄骨などに吹き付けた建材のことです。主に 耐火性・断熱性・防音性 を高める目的で使用されました。


【スレート波板】
アスベストを含む代表的な屋根材です。耐久性と耐火性に優れ、低コストであることをメリットとして、多くの家屋をはじめ工場や倉庫の屋根や外壁に使用されてきました。波状の形状が特徴で、雨水の流れを良くする設計になっています。
【フレキシブルボード(スレートボード)】
強度が高く、衝撃にも強く、さらに薄くて柔軟性のある壁材です。主に内壁や天井の仕上げ材として使われ、特に集合住宅やオフィスビルでの使用が見られました。


【石膏ボード】
内壁や天井によく使用される建材で、アスベストを含む種類も存在します。軽量で加工がしやすく、防音や防火に優れた性質を持っているため、幅広い建築物で採用されています。
【ケイ酸カルシウム板第1種(ケイカル板)】
耐火性や耐水性に優れた建築材料で、ケイ酸とカルシウムを主成分とし、アスベストが添加されることで、その性能が向上します。屋外の壁材や防火壁、さらには天井材に、高比重の第一種においては、浴室や台所など水回りの内装材としても使用されています。

3.調査の具体的な手順と実施方法
3-1. 事前調査の流れ(サンプリング、分析手法)
(1)専門家に依頼する
上記のようにアスベスト事前調査は有資格者が行わなくてはいけません。さらに、令和5年(2023年)10月からは、厚生労働省が指定するアスベスト調査の講習修了が必須となります。
(2)書面・図面調査
書面や図面からアスベスト含有の有無の把握を行わなければなりません。できる限りの情報を入手し、正確に把握することが必要です。
(3)現地での調査
書面の調査だけではなく、現地での実際の目視調査も重要です。内装の内側など見落としやすい部分も含めて、建築物の部屋や部位ごとの状況をしっかりと確認することが大切です。
(4)試料採取
目視調査だけでは判別が困難な場合は、現地で建築物のアスベスト含有の可能性がある部分の検体を採取し専門機関に分析をしてもらいます。
(5)分析調査
アスベストが含まれているかどうかを分析して調査します。「定性分析」と「定量分析」という方法があります。通常の工事ならアスベスト含有率が0.1%を超えているかどうかを調査する定性分析方法で十分です。
(6)報告書の作成
調査がすべて終了したら報告書を作成し、労働基準監督署や各都道府県に解体工事開始の二週間前までに提出する必要があります。一般的にアスベスト調査を行った機関が報告書を作成するので、元請け業者はその報告書をもとに専用のWebサイトから電子システムにて報告を行います。
4.調査を怠った場合のリスクと罰則
4-1.罰則規定と罰金の可能性
アスベストの事前調査報告を怠った場合、または虚偽の報告を行った場合には、大気汚染防止法の規定により、30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、アスベスト除去などの措置義務に違反すると3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。アスベスト調査を行わなかった場合、事業者は大きなリスクを負うことになります。まず実際に工事をする建物にアスベストが含まれていれば、飛散による健康被害のリスクが高まります。また、行政指導や罰則の対象となってしまうと、事業者は経済的な損失を被るだけでなく、社会的な信用低下にもつながるでしょう。
その他にも、アスベスト対策を怠った事業者は安全配慮義務違反となり、労働者とその家族から訴訟を起こされる可能性があります。実際に約47年間、新築工事現場及び改修工事現場において内装塗装業に従事していた元労働者が間質性排煙に疾患し死亡しました。元労働者の訴えに対し、裁判所は事業者に安全配慮義務違反があるとし、約3,522万円の損害賠償義務があることが認めらました。
4-2. 労働災害について
石綿繊維を吸入すると、肺の奥深くに入り込み、数十年後に健康被害を引き起こす可能性があります。主な疾患として以下があります。
【石綿(アスベスト)肺】
肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つです。肺の線維化を起こすものとしては石綿のほか、粉じん、薬品等多くの原因があげられ潜伏期間は15~20年といわれております。
【肺がん】
アスベストばく露から肺がん発症までに15~40年の潜伏期間があり、 ばく露量が多いほど肺がんの発生が多いことが知られています。
【悪性中皮腫】
肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にできる悪性の腫瘍です。若い時期にアスベストを吸い込んだ方の ほうが悪性中皮腫になりやすいことが知られています。潜伏期間は20~50年といわれています。
5.施工業者(元請業者)がとるべき適切な対応策
5-1. 調査を効率化するためのツール活用
前項3(- 事前調査の流れ)で記載した流れで行うことが一般的とされております。専門家に依頼するのも有りですが、コストや手間を考えてると内製化することも一つの手かもしれません。まず資格を取ることが最優先ですが、経験が浅い方は資格を取ったからいって調査を行うことは難しいのが現実です。
それを解消すべく「石綿事前調査システム」がいくつか誕生しています。その中には、システムの提供だけではなく、実際の調査をサポートしてくれるところもあります。社内に指導してくれる人がいれば問題ないですが、もし頼れる人がいない場合はそのようなサポート付きのシステムを入れることも良いでしょう。自社にあったシステムを導入することで効率よくかつ精度の高い調査を行うことが出来ると考えます。比較している記事もありませすので参考して頂ければと思います。
5-2.報告書の管理のポイント
報告書は施工業者(元請業者)が3年間保管することが義務付けられています。保管についは紙またはデータで保管しますが、どちらにもメリット・デメリットがあるかと思います。どにちらにせよ誰見てもどこに何があるか分かるようにし、3年間きちんと保管する必要があります。
また、保管だけではなく複数の調査案件が同時進行の場合は特に「この案件は報告書を提出したのか?」「この案件は終わったのか?」など進捗が分からなくなるも少なくないと思います。そのようなことが多発すると報告書や行政報告(Gビズ)の提出や保管漏れの発生が予想されます。進捗状況を常々確認出来るようにすることも特に管理者にとって必要な要素であると考えます。それを考えたときに報告書の保存と進捗管理を別々で行うのではなく、一元管理できるようなシステムを導入することが、石綿事前調査においての全て義務を完遂出来るのではないかと考えます。
6.メタラボ石綿事前調査システムなら、調査業務がスムーズに対応

6-1.作業の効率化
WEBや専用アプリを利用して、手順を追っていけば、報告書が完成するというのが一番の特徴です。行政報告(Gビズ )機能まで付いています。従来の方法であれば、図面調査でも疑わしい建材を調べながら計画を作っていましたが、疑義建材が最初から登録されているので選択すると入力が完了したり、現地調査において調査位置を示すために位置を記録していきますが、数が多い調査になると、どこを調査したか分からなくなる等の課題もありましたが、取り込んだ図面に調査位置をプロットすることが出来ます。事務所に戻って写真整理をする必要があり、該当画像をフォルダから探しながら切り張りしていましたが、調査位置毎に写真を記録出来るので、画像の仕分け作業が必要なくなります。作業効率を上げることはもちろん、経験の浅い調査者もこういったツールを利用することで、調査自体が容易にもなると考えます。
6-2.調査・報告書レベルの向上
石綿事前調査には決まった様式がないことが課題でもあります。様々な様式が存在するだけに報告書によって内容が異なります。しかも、未だに、採取した検体の分析結果だけ保有していれば保管書類となると間違った理解をしている事業者も多く、報告書の必要性すら把握されてないない現状も否めません。このシステムでは皆さんの使い慣れたExcelで報告書が出力されます。様式を統一することで確認も容易になり、調査報告書のレベル向上が各社の調査技術や意識向上にもつながると考えます。
6-3.クラウドでの一括管理
石綿事前調査は必要な調査項目を要した調査報告書を3年間の保管する必要があります。長期保存関連となれば事務所の一室占めたり、保管書類用に倉庫を用意することさえあります。データ保管にしても、担当者任せの保管であったり、社員の退職により書類がどこにあるかも分からない等、保管方法がままならない現状のようです。 このシステムでは、クラウドによるシステム構成となっており、安価なクラウド上の各社の領域に各調査情報を保管することができます。この領域に保管することで、権限を与えられた各ユーザーはいつでもどこでも情報を閲覧することが可能となります。

1991年 NTT入社、その後2007年に総合解体工事業大手の株式会社前田産業に入社、解体工事業を現場から学び、その後同社常務取締役を得て、2022年株式会社metalab.を設立。 自らが経験した解体工事業の経験を活かし、人口減等の社会的課題を解体業に特化した サービス提供で業界イノベーションを推進したい思いから事業を立ち上げ、現在では解体 工事現場代理人教育や解体施工技士対策講師等も実践している。解体工事業界18年目。
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