目次
1.石綿調査の必要性とは?
1-1.誰が対象になるのか(建設業者、解体業者、不動産関係者)
石綿(アスベスト)は、かつて建材として広く使用されていたため、解体や改修工事の際に飛散し、健康被害を引き起こす可能性があります。そのため、一定の条件下で建物を扱う業者には、事前に石綿調査を実施する義務があります。具体的には、以下の業種が対象となります。
• 建設業者:建築や改修工事を行う業者は、施工前に石綿調査を行い、適切な処理を施す必要があります。
• 解体業者:解体工事においては、石綿含有建材が飛散しないよう事前調査と適切な処理が不可欠です。
• 不動産関係者:中古建物の売買や賃貸を扱う際に、石綿の有無を確認することで、後のトラブルを防ぐことができます。

1-2. 石綿調査を怠ることによるリスク(罰則、健康被害、訴訟リスク)
アスベストの事前調査報告を怠った場合、または虚偽の報告を行った場合には、大気汚染防止法の規定により、30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、アスベスト除去などの措置義務に違反すると3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。アスベスト調査を行わなかった場合、事業者は大きなリスクを負うことになります。まず実際に工事をする建物にアスベストが含まれていれば、飛散による健康被害のリスクが高まります。また、行政指導や罰則の対象となってしまうと、事業者は経済的な損失を被るだけでなく、社会的な信用低下にもつながるでしょう。
その他にも、アスベスト対策を怠った事業者は安全配慮義務違反となり、労働者とその家族から訴訟を起こされる可能性があります。実際に約47年間、新築工事現場及び改修工事現場において内装塗装業に従事していた元労働者が間質性排煙に疾患し死亡しました。元労働者の訴えに対し、裁判所は事業者に安全配慮義務違反があるとし、約3,522万円の損害賠償義務があることが認めらました。
2.石綿調査の基本的な流れ
2-1.事前準備(対象建物の情報収集)
石綿調査を行う前に、対象となる建物の基本情報を収集することが重要です。これには、建築年、設計図面、過去の改修履歴などが含まれます。特に、1980年代以前に建設された建物は、石綿含有建材が使用されている可能性が高いため、注意が必要です。
2-2.石綿含有の可能性がある建材の特定
木材、金属、石、ガラスの素材は全てアスベストの含有が疑われる建材となります。主な建材が下記となります。
【吹き付けアスベスト】
アスベスト(石綿)をセメントや石膏などの結合材と混ぜ、スプレー状にして建物の天井や壁、鉄骨などに吹き付けた建材のことです。主に 耐火性・断熱性・防音性 を高める目的で使用されました。


【スレート波板】
アスベストを含む代表的な屋根材です。耐久性と耐火性に優れ、低コストであることをメリットとして、多くの家屋をはじめ工場や倉庫の屋根や外壁に使用されてきました。波状の形状が特徴で、雨水の流れを良くする設計になっています。
【フレキシブルボード(スレートボード)】
強度が高く、衝撃にも強く、さらに薄くて柔軟性のある壁材です。主に内壁や天井の仕上げ材として使われ、特に集合住宅やオフィスビルでの使用が見られました。


【石膏ボード】
内壁や天井によく使用される建材で、アスベストを含む種類も存在します。軽量で加工がしやすく、防音や防火に優れた性質を持っているため、幅広い建築物で採用されています。
【ケイ酸カルシウム板第1種(ケイカル板)】
耐火性や耐水性に優れた建築材料で、ケイ酸とカルシウムを主成分とし、アスベストが添加されることで、その性能が向上します。屋外の壁材や防火壁、さらには天井材に、高比重の第一種においては、浴室や台所など水回りの内装材としても使用されています。

2-3.サンプリングと分析方法
【サンプリング方法】
・吹付材の場合は、ゴルフボール1~2個程度の大きさ(体積)を採取する
・成形板、石膏ボード、ケイカル板、天井材等の場合は5㎝角程度の大きさのものを採取する
・仕上塗材、長尺シート、Pタイル等の場合は、3~5㎝角程度またはスプーン大さじ2杯分程度のものを採取する
・鉄骨や梁に当たる部分まで採取を行う
必ず防塵マスク等を着用の上、採取箇所を湿潤し、飛散したアスベスト粉塵を吸い込まないよう安全性に細心の注意を払ってください。サンプルを採取した部分からもアスベストの飛散の危険性があるため、採取部分に布テープを貼る等の飛散防止対策を取りましょう。


【分析方法】
アスベストの分析方法には「定性分析」と「定量分析」の2種類がありますが、工事を進めるにあたっては、定性分析のみで十分という場合が多いです。
「定性分析」
定性分析は簡単に言うとアスベストの含有が「有」か「無」かを、判定する方法です。詳しく解説しますと、アスベストの含有率が0.1重量%超えているかの確認を行う分析方法になります。国際規格であるを基に国内の規格として導入されたJIS A 1481-1と従来の規格であるJIS A 1481-2の2タイプがあり、どちらの方法で行っても問題はありません。
JIS A 1481-1は、国際規格ISO 22262-1を基準にした偏光顕微鏡による分析方法になり、広く活用されています。層別に前処理や含有層の特定層別に分析を行うことが可能で、精度が高く所要日数も短いことが特徴です。アスベストを含有する層の特定が可能なので含有箇所ごとに除去方法を選定できます。


「定量分析」
定量分析は、JIS A 1481-3、JIS A 1481-4、JIS A 1481-5の規格で行い、アスベストを何%含有しているかを判定する分析方法になります。通常、定性分析でアスベスト含有と判定された場合は、規制値の0.1重量%を超える可能性が高いため調査を進めるなら定性分析で十分と言えます。
3.石綿調査の費用相場
3-1. 調査にかかる費用の一般的な目安
石綿調査の費用は、建物の規模や調査方法によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
• 簡易調査(目視・書類確認):1万~5万円程度
• サンプリング分析(1検体あたり):2万~5万円
• 詳細調査(複数検体の採取・分析):10万~50万円程度


3-2. 外注する場合と自社対応する場合のコスト比較
外注する場合は、高精度な調査が可能ですが、コストがかかります。一方で、自社で調査を行う場合、初期費用(機材購入・教育費用)はかかるものの、長期的にはコスト削減が可能です。いくつか「石綿事前調査システム」がでており外注する場合は、高精度な調査が可能ですが、コストがかかります。一方で、自社で調査を行う場合、初期費用(機材購入・教育費用)はかかるものの、長期的にはコスト削減が可能です。
法改正に伴い「石綿事前調査システム」がいくつか誕生しています。その中には、システムの提供だけではなく、実際の調査をサポートしてくれるところもあります。社内に指導してくれる人がいれば問題ないですが、もし頼れる人がいない場合はそのようなサポート付きのシステムを入れることも良いでしょう。自社にあったシステムを導入することで効率よくかつ精度の高い調査を行うことが出来ると考えます。比較している記事もありませすので参考して頂ければと思います。
4.石綿調査の報告書作成
4-1.法令で求められる報告書のポイント
石綿調査の結果は、適切に記録し、関係機関へ提出する必要があります。報告書には、以下の情報を含める必要があります。
• 調査対象建物の情報(所在地、建築年)
• 石綿含有建材の有無および位置
• サンプリングおよび分析結果
• 調査担当者の情報
4-2. 調査結果を記録する際の注意点
報告書の作成時には、以下の点に注意する必要があります。
• 法令に準拠したフォーマットを使用する
• 分析結果を正確に記録する
• 誤記や記載漏れを防ぐため、ダブルチェックを行う
5.メタラボ石綿事前調査システムを使えば、迅速かつ正確な調査が可能

5-1.専用アプリによる作業の効率化
WEBや専用アプリを利用して、手順を追っていけば、報告書が完成するというのが一番の特徴です。行政報告(Gビズ )機能まで付いています。従来の方法であれば、図面調査でも疑わしい建材を調べながら計画を作っていましたが、疑義建材が最初から登録されているので選択すると入力が完了したり、現地調査において調査位置を示すために位置を記録していきますが、数が多い調査になると、どこを調査したか分からなくなる等の課題もありましたが、取り込んだ図面に調査位置をプロットすることが出来ます。事務所に戻って写真整理をする必要があり、該当画像をフォルダから探しながら切り張りしていましたが、調査位置毎に写真を記録出来るので、画像の仕分け作業が必要なくなります。作業効率を上げることはもちろん、経験の浅い調査者もこういったツールを利用することで、調査自体が容易にもなると考えます。
5-2.クラウドでの一括管理、最新の法規制に対応
石綿事前調査は必要な調査項目を要した調査報告書を3年間の保管する必要があります。長期保存関連となれば事務所の一室占めたり、保管書類用に倉庫を用意することさえあります。データ保管にしても、担当者任せの保管であったり、社員の退職により書類がどこにあるかも分からない等、保管方法がままならない現状のようです。 このシステムでは、クラウドによるシステム構成となっており、安価なクラウド上の各社の領域に各調査情報を保管することができます。この領域に保管することで、権限を与えられた各ユーザーはいつでもどこでも情報を閲覧することが可能となります。また、一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会様とパートナーシップ協定を結んでおりますので最新の法規制に対応しておりますのでご安心頂けます。
5-3.報告書の自動作成機能で業務負担を軽減
石綿事前調査には決まった様式がないことが課題でもあります。様々な様式が存在するだけに報告書によって内容が異なります。しかも、未だに、採取した検体の分析結果だけ保有していれば保管書類となると間違った理解をしている事業者も多く、報告書の必要性すら把握されてないない現状も否めません。このシステムでは皆さんの使い慣れたExcelで報告書が出力されます。様式を統一することで確認も容易になり、調査報告書のレベル向上が各社の調査技術や意識向上にもつながると考えます。

1991年 NTT入社、その後2007年に総合解体工事業大手の株式会社前田産業に入社、解体工事業を現場から学び、その後同社常務取締役を得て、2022年株式会社metalab.を設立。 自らが経験した解体工事業の経験を活かし、人口減等の社会的課題を解体業に特化した サービス提供で業界イノベーションを推進したい思いから事業を立ち上げ、現在では解体 工事現場代理人教育や解体施工技士対策講師等も実践している。解体工事業界18年目。
コメント