目次
1.はじめに:空調設備業者も石綿リスクの当事者です
空調設備の工事や保守に携わる技術者は、天井裏やダクト内、配管周辺など、建物の奥深くに入り込む機会が多い職種です。
しかし、こうした“見えない場所”こそ、過去に石綿(アスベスト)が使われていた可能性が高く、気づかずに作業することで石綿に接触・吸引してしまうリスクがあります。
近年の法改正で、すべての解体・改修工事には石綿調査が義務化され、元請や協力業者にも安全対策が強く求められるようになりました。
空調設備業者も例外ではなく、石綿リスクを「知らずに踏み込まない」ための知識と対応力が不可欠となっています。


2.空調工事で石綿に接触しやすい箇所とは?
空調工事において石綿が使われていた可能性が高いのは、以下のような箇所です。
<よくある石綿含有部位>
• ダクト外装の断熱材(レベル2建材)
鉄板ダクトの外側に巻かれていた繊維系の断熱材。劣化により剥がれやすくなっていることが多い。
• 鉄骨や天井内の吹付け耐火材(レベル1建材)
天井裏の鉄骨や躯体に直接吹き付けられていた石綿材。触れたり振動を与えることで繊維が飛散。
天井材に堆積しいる吹付け材があれば、耐火材を触らなくても調査の必要あり。
• 室内天井のけい酸カルシウム板や化粧石膏板
天カセエアコン取り替えなどの際に接触する可能性あり。
• 設備室内の配管断熱材やガスケット
冷温水配管、熱源機器まわりに石綿保温材やパッキンが使用されていたことも。
• 配線・制御ケーブルの貫通部パテ
シーリング材の中に石綿が混入していることがある。


3.見落とされがちなリスク事例
実際の空調現場で、石綿に気づかず作業してしまった例は少なくありません。
ケース①:天井裏での冷媒管撤去作業中
冷媒管に巻かれた保温材が、実は石綿繊維を含むもので、剥がした際に繊維が舞い上がった。
ケース②:エアコン入れ替え時に天井ボードを破損
既存のけい酸カルシウム板に石綿が含まれており、天井開口時に破片が飛散。後で調査して発覚。
ケース③:配線・制御ケーブルの貫通部パテ
天井裏の鉄骨部に古い吹付け材があり、ダクト撤去作業中に落下。PPEをしておらず後に体調不良を訴える


4.空調設備業者がとるべき予防策
- 施工前に「石綿調査済かどうか」を必ず確認する
• 元請業者や建物管理者に、石綿の事前調査報告書があるかを確認。
• 曖昧な場合は「調査がない限り作業できない」旨を伝える勇気が重要。
• 特に昭和50年代以前の建物では要注意。 - ダクト・配管周辺の断熱材は“石綿前提”「みなし含有」で見る
• 明確に非石綿と確認できない限り、「みなし含有」という前提で作業を計画。
• 劣化した保温材は触れただけで崩れることが多く、むやみに剥がさず、まず写真で記録→報告。 - 井内作業では防じんマスクと長袖を基本装備に
• 天井裏や設備室では、DS2以上の防じんマスク・保護メガネ・手袋・長袖作業服を必ず装着。
• 粉じんが漂いやすい環境では、マスクなし作業は絶対にNG。 - 「壊す・削る・剥がす」前に必ず相談する
• 解体・開口・ケレンといった作業には石綿飛散リスクが伴います。
• 石綿作業主任者の確認や、調査業者への相談が必要です。
• 自己判断で「やっちゃって大丈夫」は通用しません。 - 社内でも石綿の基本教育を行い、情報を共有する
• 若手や新入りが無意識に石綿に触れてしまわないよう、定期的に社内研修や情報共有を行う。
• 現場で「これ石綿かも」と気づける目を育てることが大切です。


5.まとめ:空調設備業者こそ“石綿に気づける力”が必要
空調設備工事は、石綿のリスクが見えづらい場所で行われることが多く、リスクに気づけないまま作業してしまう危険があります。
• 石綿を見たことがない
• 過去に説明を受けたことがない
• 今まで大丈夫だったから今回も大丈夫
…そうした油断が、思わぬ曝露やトラブルの原因になりかねません。
だからこそ、空調設備業者には「気づける知識」と「対応できる体制」が求められます。
自分を守ることは、現場全体の安全を守ること。
石綿を知らずに吸い込んでしまう――そんな時代を終わらせるために、今日から予防策を意識していきましょう。
▼石綿調査後、簡単に報告書を作成出来るシステムもございます。是非ご覧ください。


1991年 NTT入社、その後2007年に総合解体工事業大手の株式会社前田産業に入社、解体工事業を現場から学び、その後同社常務取締役を得て、2022年株式会社metalab.を設立。 自らが経験した解体工事業の経験を活かし、人口減等の社会的課題を解体業に特化した サービス提供で業界イノベーションを推進したい思いから事業を立ち上げ、現在では解体 工事現場代理人教育や解体施工技士対策講師等も実践している。解体工事業界18年目。
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