目次
1.はじめに:電気工事にも“見えない石綿リスク”が潜んでいる
電気工事と石綿(アスベスト)――あまり結びつかないように思えるかもしれません。
しかし、電線・配管の貫通部、分電盤まわり、ダクト内、天井裏など、実は電気工事が関わる多くの場所に石綿が使われていた可能性があるのです。
2022年の法改正を受けて、すべての解体・改修作業前には石綿調査の実施が義務化され、実施を厳しく求められるようになりました。
それに伴い、電気工事業者にも石綿に対する知識と対応力が求められています。


2.電気工事に潜む石綿の代表的な使用箇所
電気設備周辺の石綿含有リスクは、以下のような場所にあります。
• 分電盤・配電盤の裏板・断熱材
• 天井裏の耐火被覆材(鉄骨、ダクト)
• 配管・配線の貫通部まわりのパテやシール材
• 照明・換気扇の天井埋め込み部(ケイカル板など)
• EV機械室・電気室の壁や天井
• ダクト外装の断熱材(レベル2建材)
とくに1980年以前に建てられた建物では、電気設備の設置時に耐熱目的で石綿製品が多用されていた例が多く見られます。


3.現場で起こりうる石綿との接触シーン
以下のような作業中に、知らずに石綿を破損・露出させてしまうことがあります
• 配線貫通口の拡張・はつり作業
壁の内側に石綿パテやボードがある場合、削ることで粉じんが飛散。
• 天井内のケーブル更新作業
耐火被覆材が吹き付けられた鉄骨・ダクトの上を移動することで、粉じんを巻き上げる可能性。
• 電気室・機械室の機器取り替え
設備背面に古い石綿断熱材が使われていることがあり、取り外しや解体時に飛散リスクが高まる。
• 分電盤の内部処理作業
内部の断熱ボードや遮熱シートが石綿含有である場合、誤って損傷させてしまう恐れ。


4.電気工事業者が実践すべき5つの石綿対策
- 作業前に“石綿調査”の有無を確認する
まず基本として、作業対象の建物や設備が石綿調査済みかどうかを、施主や元請から確認しましょう。
調査記録がない場合、作業を進める前に石綿含有建材の可能性があるかどうかをチェックする必要があります。 - 配線・貫通部まわりは特に注意する
電線の通る壁・天井・床の貫通部には、耐火措置として石綿パテやシール材が詰められているケースがあります。
カッターやハツリ工具で除去する前に、材質の確認・湿潤化・防塵対策を行いましょう。 - 天井裏・ダクト内での作業は防じん対策を徹底
古い鉄骨やダクトには、吹き付けアスベストやけい酸カルシウム板が使われている場合があります。
作業中は粉じんが舞いやすいため、PPE(個人用保護具)として作業に応じてN95以上のマスクや長袖作業服、手袋を必ず着用しましょう。 - 石綿作業主任者または元請との連携を密に
石綿が含まれていると判断された場合は、その現場での対応権限を持つ石綿作業主任者の指示を仰ぐことが最重要です。独断で解体・加工をせず、判断は必ず責任者に委ねるようにします。 - 万が一の曝露時には迅速な初動対応を
万が一、石綿らしき建材を破損・接触した場合は:
• 作業を中断し現場を隔離
• 元請や上長に速やかに報告
• 現場の写真や状況を記録
• 自身の体調変化を数日〜数年スパンで観察
必要に応じて、石綿作業時は必ず産業医や石綿健康診断の受診を行い、健康被害の早期発見につなげます。
5.まとめ:電気工事業者も“石綿に気づける目”を持とう
現代の電気工事は、「ただ線を通す」だけでなく、建物全体の安全性と健康リスクにも目を配る時代に入りました。
• 解体・改修現場に関わることが多い
• 壁や天井の奥にアクセスする機会が多い
• 配線ルートに石綿が含まれていたケースが多い
――これらの理由から、電気工事業者も“石綿リスクの最前線”に立っている存在といえます。
現場での一つひとつの判断が、
作業員自身の命を守り、現場の安全を確保することに直結します。
「自分は関係ない」ではなく、「自分も守れる」立場であることを、ぜひ意識してください。
▼石綿調査後、簡単に報告書を作成出来るシステムもございます。是非ご覧ください。


1991年 NTT入社、その後2007年に総合解体工事業大手の株式会社前田産業に入社、解体工事業を現場から学び、その後同社常務取締役を得て、2022年株式会社metalab.を設立。 自らが経験した解体工事業の経験を活かし、人口減等の社会的課題を解体業に特化した サービス提供で業界イノベーションを推進したい思いから事業を立ち上げ、現在では解体 工事現場代理人教育や解体施工技士対策講師等も実践している。解体工事業界18年目。
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