塗装業者が注意すべき石綿リスクとその対策6選

石綿基礎知識

1.はじめに:塗装工事にも石綿のリスクが潜んでいる

石綿(アスベスト)と聞くと、「解体工事」や「建材の撤去作業」に関係するものと思われがちです。しかし、実は塗装工事においても知らずに石綿含有建材を扱ってしまうリスクが少なくありません。外壁塗装・天井塗装・下地処理・洗浄など、意外なところに石綿建材が含まれており、作業中に粉じんが発生すると作業者が石綿に曝露する恐れがあります。
法改正により、2022年以降は塗装業者にも石綿の事前報告確認義務が課されるようになり、「知らなかった」では済まされない状況となっています。

2.石綿が含まれる可能性がある塗装対象部位とは?

塗装作業で関わる場所の中には、石綿含有の建材が使われていたケースが多くあります。
• 外壁の下地材(押出成形セメント板、スレート板など)
• 外壁塗材そのもの(旧リシン吹付、スタッコ、吹付けタイル)
• 天井材(ジプトーン、けい酸カルシウム板など)
• 軒天・軒裏(フレキシブルボードなど)
• 鉄骨の耐火被覆材(吹付けアスベスト)
とくに1980年以前に建てられた建物では、電気設備の設置時に耐熱目的で石綿製品が多用されていた例が多く見られます。

3.現場で起こりうる石綿の曝露例

塗装業務で石綿に接触してしまう例は、以下のような作業中に発生します
• 下地処理中に壁材を削る → 石綿含有塗材やスレート板を研磨し、粉じんを吸い込む
• 高圧洗浄中に塗材が剥がれる → 含有していた場合、飛散・排水への流出も懸念
• 軒裏をケレン作業中 → フレキ板やけい酸カルシウム板(石綿含有)を傷つける
• 天井や外壁の塗替えで劣化層をはがす → 下地材ごと剥離して石綿が露出
どれも「知らずに」やってしまいがちな工程ばかりです。事前確認と正しい作業手順が、作業者の安全を守るカギとなります。

4塗装業者が実施すべき石綿リスク対策6選

  1. 石綿含有の有無を事前に確認する
    まず基本として、「塗装対象の建材に石綿が含まれているかどうか」を事前調査報告書や元請・施主に確認しましょう。報告書がない場合は、石綿調査を依頼することが必要です。
  2.  築年数・使用建材の記録から推定する
    昭和50〜60年代に建てられた建物であれば、高確率で石綿含有建材が使われています。外壁材や天井材の種類、施工時期、改修履歴などの情報から、リスクを事前に把握しましょう。
  3.  下地処理や研磨作業は慎重に進める
    研磨・ケレンなどの下地処理は、最も粉じんが発生しやすい工程です。事前調査が不十分な場合や疑わしい箇所については、無理に削らず、上塗り対応を検討するなどの判断も必要です。
  4. PPE(個人用保護具)を確実に装着
    万が一の曝露に備えて、使い捨てマスク(DS2以上)や保護メガネ、手袋、作業着などを装着。作業後の手洗い・うがい・洗顔も忘れずに行いましょう。(作業に応じたレベルのマスク)
  5. 飛散・排水・周囲環境への配慮を
    高圧洗浄やブラストの際には、養生シートで周囲を覆う・排水の回収処理を行うなど、近隣や環境への二次被害も防ぎます。
    自治体によっては排水処理ルールが定められている場合もあるため、事前確認を。
  6. 万が一の対応フローを社内で周知しておく
    ・石綿らしき建材が露出した場合
    ・作業中に破損・剥離が発生した場合
    ・粉じんを吸い込んでしまった場合
    こうしたときにすぐ対応できるように、報告・対応マニュアルや緊急連絡先をチーム内で共有しておきましょう。

5.まとめ:塗装業者も“石綿リスク管理者”のひとり

塗装業者の手がける作業は、直接建材に触れる・表面を加工する工程が多いため、石綿リスクとは切っても切れない関係にあります。知らずに施工を進めてしまえば、自分自身だけでなく施主・近隣住民への健康被害につながる恐れもあります。
法令を守り、安全な施工を行うために――
• 石綿調査の確認
• PPEの徹底
• 飛散防止措置
• 緊急対応の準備

これらをチーム全体で徹底し、「リスクに気づける職人」になることが、安全と信頼の第一歩です。

▼石綿調査後、簡単に報告書を作成出来るシステムもございます。是非ご覧ください。

前田 淳司

1991年 NTT入社、その後2007年に総合解体工事業大手の株式会社前田産業に入社、解体工事業を現場から学び、その後同社常務取締役を得て、2022年株式会社metalab.を設立。 自らが経験した解体工事業の経験を活かし、人口減等の社会的課題を解体業に特化した サービス提供で業界イノベーションを推進したい思いから事業を立ち上げ、現在では解体 工事現場代理人教育や解体施工技士対策講師等も実践している。解体工事業界18年目。

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