なぜ石綿調査は属人化しやすいのか?“経験差による判断の揺れ”がトラブルを生む構造

物件管理

なぜ石綿調査は属人化するのか ― 経験依存の構造を変える「データ管理」という答え

同じ建物を調査しても、担当者によって結果が違う──。現場でよく聞かれるこの課題の背景には、「属人化」という構造的な問題があります。経験や勘に頼る判断、記録様式のばらつき、情報が引き継がれない業務体制。これらが重なり、調査品質の再現性を奪っています。

本記事では、属人化が生まれる原因と、その解決策としての「データ一元管理」を解説します。

石綿調査の属人化とデータ管理のイメージ

■ 属人化が生まれる7つの理由

石綿調査が属人化する背景には、次のような要因が重なっています。

  • 非破壊調査が経験依存: 表面材を大きく剥がせない現場では、勘と経験に頼らざるを得ない。
  • サンプリング位置に「絶対の正解」がない: 同じ建材でも層や部位によって結果が異なり、個人判断に差が出る。
  • 記録フォーマットが統一されていない: 写真・図面・メモが担当者ごとにバラバラで、あとから追えない。
  • 発注者が力量差を見抜きにくい: 実際の調査レベルや判断の根拠が、報告書からは見えづらい。
  • 担当者異動で情報が消える: 個人PCや紙での管理が中心で、組織としての記録が残りにくい。
  • 建物データの不在: 物件単位での履歴台帳がなく、過去結果が活用されない。
  • 再発を生む「構造的属人化」: 人に依存したまま業務が設計されており、同じ問題を何度も繰り返す。
属人化が起きる構造を示す図解イメージ

■ 属人化の本質は「人」ではなく「仕組み」

「属人化している」と聞くと、つい“担当者の問題”のように感じてしまいますが、実際には仕組みの欠如が本質です。

海外では、建物ごとに調査履歴を残すAsbestos Register(アスベスト台帳)が整備されており、誰が担当しても同じ情報にアクセスできます。一方、日本では建物・案件ごとにExcelや紙で記録され、時系列や全体像が見えにくい状況が続いています。

属人化を防ぐには、「誰が」「いつ」「どこを」「どう調べたか」を再現できるデータ構造を用意することが欠かせません。

海外のアスベスト台帳(Asbestos Register)の概念イメージ

■ 属人化を壊す鍵:データ一元管理

metalab.の物件管理を活用すれば、年度・担当者・分析結果・写真・図面・Gビズ履歴まで、物件ごとに一体管理することができます。調査結果をデータとして残すことで、「再現性のある品質」につなげることが可能です。

  • — 📘 年度・棟別台帳管理: 建物・工作物を統一フォーマットで登録し、履歴を残す。
  • — 📷 写真・分析書の紐づけ: 現場の写真と分析結果を物件・部位単位で関連付け。
  • — 🔄 担当交代への対応: ログとメモで、担当が変わっても過去の判断経緯がわかる。
  • — 💾 履歴の自動蓄積: 調査更新時も過去データを消さず、比較検証に活用できる。
metalab物件管理画面のイメージ(データ一元管理)

■ データ化がもたらす4つの変化

  1. 品質の安定化: 判断基準と記録が共有され、担当者が変わっても一定レベルを維持できる。
  2. 情報が消えない: 個人PCや紙に依存せず、組織として記録を持ち続けられる。
  3. コスト削減: 重複調査・再分析を減らし、無駄な費用と時間を抑えられる。
  4. 信頼の可視化: 発注者に対しても、過去履歴を示しながら説明責任を果たせる。
データ化によって得られるメリットのイメージ

■ 情報資産としての石綿調査へ

属人化をなくすことは、ベテランの経験や勘を否定することではありません。むしろ、経験をデータとして継承する仕組みをつくることが、本当の「品質確保」につながります。

石綿調査を“その場限りの報告書作成”で終わらせず、建物のライフサイクルに寄り添う情報資産として残していくこと。metalab.は、そのための仕組みづくりをお手伝いします。

石綿調査データを資産として活用する未来イメージ

■ メタラボ石綿事前調査システム

メタラボ石綿事前調査システムなら、物件管理を中心に調査データの一元管理・CSV出力・レポート自動生成までワンストップ。属人化した現場業務を「仕組み化」し、品質と効率の両立を実現します。

メタラボ石綿事前調査システムの画面例

■ 著者紹介

前田 淳司
前田 淳司

1991年 NTT入社、その後2007年に総合解体工事業大手の株式会社前田産業に入社、解体工事業を現場から学び、その後同社常務取締役を得て、2022年株式会社metalab.を設立。
自らが経験した解体工事業の経験を活かし、人口減等の社会的課題を解体業に特化したサービス提供で業界イノベーションを推進したい思いから事業を立ち上げ、現在では解体工事現場代理人教育や解体施工技士対策講師等も実践している。解体工事業界18年目。

© metalab.

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