石綿(アスベスト)とは? 基礎知識と最新の規制をわかりやすく解説

石綿基礎知識

1.石綿(アスベスト)とは?

1-1. 石綿の基本的な特性

アスベスト(石綿)は、天然に存在する鉱物繊維で、数千年にわたってさまざまな用途に使用されてきました。耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性に優れているため、特に20世紀中盤から後半にかけて建築材料や工業製品に広く利用されました。しかし、その微細な繊維が人体に有害であることが判明し、現在では多くの国で使用が禁止されています。

石綿は蛇紋石族と角閃石族に大別され、6種類があります。そのうち、日本で使用された代表的な石綿は、蛇紋石族の白石綿(クリソタイル)と角閃石族の茶石綿(アモサイト)、青石綿(クロシドライト)です。

1-2. どのような建材に使われているのか

アスベストは、安価であり、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性など多様な機能を有していることから、耐火・断熱・防音の目的で建築材料として、建築物(ビル、学校・病院、工場、一般住宅など)や工作物(駐車場、プラットホーム、変電施設など)に大量に使用されてきました。主な建材として、吹付け材(耐火・断熱目的)、石綿含有スレート(屋根・外壁)、石綿セメント板(内装・外装)、ビニル床タイル、石綿パッキンやガスケット(配管設備)等に含まれている場合が多いです。

1-3. 石綿の健康リスク

石綿繊維を吸入すると、肺の奥深くに入り込み、数十年後に健康被害を引き起こす可能性があります。主な疾患として以下があります。
(1)石綿(アスベスト)肺
肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つです。肺の線維化を起こすものとしては石綿のほか、粉じん、薬品等多くの原因があげられ潜伏期間は15~20年といわれております。
(2)肺がん
アスベストばく露から肺がん発症までに15~40年の潜伏期間があり、 ばく露量が多いほど肺がんの発生が多いことが知られています。
(3)悪性中皮腫
肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にできる悪性の腫瘍です。若い時期にアスベストを吸い込んだ方の ほうが悪性中皮腫になりやすいことが知られています。潜伏期間は20~50年といわれています。

2.石綿に関する法規制の歴史

2-1.過去の使用状況と規制の変遷

日本のアスベストの輸入は、明治20年代から始まり、第二次世界大戦中は一旦輸入が途絶えたものの、戦後また輸入が再開されました。日本におけるアスベスト輸入量は、1970~1975年頃にピークを迎え、年間30万トンを超える量の石綿が輸入されました。その後は、国の規制により石綿の使用が禁止されるようになり、それに伴って石綿の輸入量は減少していき、1995年に吹付けアスベストの全面禁止、最終的には、2006年にアスベストの輸入と使用が禁止されました。

2-2.日本と海外の石綿規制の違い

「世界疾病負荷(GBD:Global Burden of Diseases)」が2020年に発表した日本の石綿関連疾患死亡数の表です。表1の「石綿関連疾患全体」をみると、1990年から2019年にかけて死亡数が およそ4倍前後に増加しているのが分かります。中皮腫(A+Eの内数)の行は、1990年には数百人台だったものが2019年には3,000人前後まで増えています。
中皮腫は石綿との因果関係が特に強く、職業性・環境性曝露のいずれでも潜伏期間を経て発症しやすい疾患です。日本では石綿の使用はすでに全面禁止されていますが、過去の使用量が非常に多かったため、今後もしばらくは潜伏期間を経て発症する患者が続く可能性が高いと考えられています。一方で、ピークを過ぎると徐々に減少に転じる予測もあり、どの時点で減少が顕著化するかが今後の焦点になります。

一方海外では、表3の「石綿総数(F)」に注目すると、1990年の約11万3千人から2019年には約26万人へと、2倍以上に増加していることが分かります。石綿関連疾患全体として、世界規模での健康被害が拡大してきた様子がうかがえます。2019年には世界で24万人を超す人々がアスベスト曝露の結果亡くなっているという状況です。先進国の多くは使用を禁止しているものの、一部の新興国や発展途上国では依然として石綿を使用しているケースも報告されており、今後さらに石綿関連疾患が増加する地域が出てくる懸念もあります。表5-1によると日本のアスベスト疾患による死亡数は、アメリカと中国に次いで、世界第3位となっています。

(表1・表3・表5-1 出典:全国労働安全衛生センター連絡会議)

日本と世界全体の石綿関連死亡数を比較すると、規模・規制状況・曝露の背景などが大きく異なりますが、いずれも1990年から2019年にかけて増加傾向にある点は共通しています。日本ではすでに石綿の使用は禁止されているものの、過去に大量に使用された影響が今後も数十年単位で顕在化し続ける可能性があります。世界全体では、規制が行き届いていない国で新たな曝露が続き、長期的にはさらに石綿関連疾患が増えるリスクがあると考えられます。今後は、解体時の対策や残存石綿の適切な管理を徹底するとともに、世界規模での石綿禁止・規制の強化が重要となるでしょう。

3.最新の石綿規制(2025年版)

3-1. 現行の法規制

【事前調査の実施】建築物等の解体・改修工事を行う際、全ての部材について設計図書や目視、分析により石綿含有の有無を調査し、その結果を3年間保存することが求められます。
【工事計画の届出】石綿を含む建材の除去等の工事計画は、開始の14日前までに労働基準監督署に届け出る必要があります。
【除去工事における規制】除去工事終了後、作業場の隔離を解除する前に、資格者が石綿等の取り残しがないことを確認することが義務付けられています。
【記録の保存】石綿含有建材の解体・改修工事において、作業の実施状況を写真等で記録し、40年間保存することが求められます。

3-2. 新たに追加・強化された規制のポイント

【労働安全衛生規則の改正(2025年4月1日施行)】危険箇所への立入禁止や退避等の安全措置の対象が、「労働者」から「作業に従事する者」に拡大されます。これにより、一人親方や他社の労働者、資材搬入業者なども保護の対象となります。

4.石綿調査の重要性

4-1. 誰が対象になるのか

施工業者(元請業者)は、建築物・工作物等の解体・改修工事を行う際には工事の規模に変わらず義務付けられており、更に一定規模以上(解体:解体部分の床面積が80㎡以上、改修:請負金額が税込100万円以上)の工事はあらかじめ施工業者が労働基準監督署と自治体に対して、事前調査結果の報告を行ことが義務化されました。建築物の改修工事とは、建築物に現存する材料に何らかの変更を加える工事であって、建築物の解体工事以外のものをいい、リフォーム、修繕、各種設備工事、塗装や外壁補修等であって既存の躯体の一部の除去・切断・破砕・研磨・穿孔(穴開け)等を伴うものを含みます。

4-2. 調査を怠った場合のリスク

アスベストの事前調査報告を怠った場合、または虚偽の報告を行った場合には、大気汚染防止法の規定により、30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、アスベスト除去などの措置義務に違反すると3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。アスベスト調査を行わなかった場合、事業者は大きなリスクを負うことになります。まず実際に工事をする建物にアスベストが含まれていれば、飛散による健康被害のリスクが高まります。また、行政指導や罰則の対象となってしまうと、事業者は経済的な損失を被るだけでなく、社会的な信用低下にもつながるでしょう。
その他にも、アスベスト対策を怠った事業者は安全配慮義務違反となり、労働者とその家族から訴訟を起こされる可能性があります。実際に約47年間、新築工事現場及び改修工事現場において内装塗装業に従事していた元労働者が間質性肺炎に疾患し死亡しました。元労働者の訴えに対し、裁判所は事業者に安全配慮義務違反があるとし、約3,522万円の損害賠償義務があることが認めらました。

5.石綿を適切に管理・対応するために

5-1. 調査・除去の流れ

(1)専門家に依頼する
上記のようにアスベスト事前調査は有資格者が行わなくてはいけません。さらに、令和5年(2023年)10月からは、厚生労働省が指定するアスベスト調査の講習修了が必須となります。
(2)書面・図面調査
書面や図面からアスベスト含有の有無の把握を行わなければなりません。できる限りの情報を入手し、正確に把握することが必要です。
(3)現地での調査
書面の調査だけではなく、現地での実際の目視調査も重要です。内装の内側など見落としやすい部分も含めて、建築物の部屋や部位ごとの状況をしっかりと確認することが大切です。
(4)試料採取
目視調査だけでは判別が困難な場合は、現地で建築物のアスベスト含有の可能性がある部分の検体を採取し専門機関に分析をしてもらいます。
(5)分析調査
アスベストが含まれているかどうかを分析して調査します。「定性分析」と「定量分析」という方法があります。通常の工事ならアスベスト含有率が0.1%を超えているかどうかを調査する定性分析方法で十分です。
(6)報告書の作成
調査がすべて終了したら報告書を作成し、労働基準監督署や各都道府県に解体工事開始の二週間前までに提出する必要があります。一般的にアスベスト調査を行った機関が報告書を作成するので、元請け業者はその報告書をもとに専用のWebサイトから電子システムにて報告を行います。

6.メタラボ石綿事前調査システムなら、確実で効率的な調査が可能

6-1.作業の効率化

WEBや専用アプリを利用して、手順を追っていけば、報告書が完成するというのが一番の特徴です。行政報告(Gビズ )機能まで付いています。従来の方法であれば、図面調査でも疑わしい建材を調べながら計画を作っていましたが、疑義建材が最初から登録されているので選択すると入力が完了したり、現地調査において調査位置を示すために位置を記録していきますが、数が多い調査になると、どこを調査したか分からなくなる等の課題もありましたが、取り込んだ図面に調査位置をプロットすることが出来ます。事務所に戻って写真整理をする必要があり、該当画像をフォルダから探しながら切り張りしていましたが、調査位置毎に写真を記録出来るので、画像の仕分け作業が必要なくなります。作業効率を上げることはもちろん、経験の浅い調査者もこういったツールを利用することで、調査自体が容易にもなると考えます。

6-2.調査・報告書レベルの向上

石綿事前調査には決まった様式がないことが課題でもあります。様々な様式が存在するだけに報告書によって内容が異なります。しかも、未だに、採取した検体の分析結果だけ保有していれば保管書類となると間違った理解をしている事業者も多く、報告書の必要性すら把握されてないない現状も否めません。このシステムでは皆さんの使い慣れたExcelで報告書が出力されます。様式を統一することで確認も容易になり、調査報告書のレベル向上が各社の調査技術や意識向上にもつながると考えます。

6-3.クラウドでの一括管理

石綿事前調査は必要な調査項目を要した調査報告書を3年間の保管する必要があります。長期保存関連となれば事務所の一室占めたり、保管書類用に倉庫を用意することさえあります。データ保管にしても、担当者任せの保管であったり、社員の退職により書類がどこにあるかも分からない等、保管方法がままならない現状のようです。 このシステムでは、クラウドによるシステム構成となっており、安価なクラウド上の各社の領域に各調査情報を保管することができます。この領域に保管することで、権限を与えられた各ユーザーはいつでもどこでも情報を閲覧することが可能となります。

6-4.専門家によるシステム以外のサポート付きで初心者でも安心

このシステムの運営会社(株)metalab.代表は解体工事業界を18年経験しています。他のスタッフも現場を経験しており、そのメンバーで一から開発にかかわっていることから現場に寄り添ったシステムになっています。また、実際の石綿事前調査を行っていることから、現場についてのアドバイスも出来ます。特にこれから調査を始める方、経験の浅い方にとってはとても不安だと思います。我流で手探りによってやるよりはシステムを導入して、かつ技術的なサポートを受けられるという保証があればより心強いでしょう。

前田 淳司

1991年 NTT入社、その後2007年に総合解体工事業大手の株式会社前田産業に入社、解体工事業を現場から学び、その後同社常務取締役を得て、2022年株式会社metalab.を設立。 自らが経験した解体工事業の経験を活かし、人口減等の社会的課題を解体業に特化した サービス提供で業界イノベーションを推進したい思いから事業を立ち上げ、現在では解体 工事現場代理人教育や解体施工技士対策講師等も実践している。解体工事業界18年目。

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