2025年に向けた石綿規制強化のポイントと対応策

法規制・コンプライアンス

1.石綿規制の最新動向

1-1.2025年に向けた規制強化の背景

2025年が始まった。2022年の法改改正から2年が経ち、2026年1月着工工事から新たに工作物の事前調査が有資格の調査が義務付けされます。
義務付けられる特定工作物の種類は以下のとおり。
① 反応槽
② 加熱炉
③ ボイラー及び圧力容器
④ 配管設備(建築物に設ける給水設備、排水設備、換気設備、暖房設備、冷房設備、排煙設備等の建築設備を除く。)
⑤ 焼却設備
⑥ 貯蔵設備(穀物を貯蔵するための設備を除く。)
⑦ 発電設備(太陽光発電設備及び風力発電設備を除く。)
⑧ 変電設備
⑨ 配電設備
⑩ 送電設備(ケーブルを含む。)
事前調査が義務つけられたうえに、更に工作物は別分類され、工作物用の資格者が必要となります。工業地帯のプラントエリアを現場管理する事業者や設備業者関連は資格取得も急務と言えます。

1-2. 国外の規制強化のトレンド

上記で述べたように、石綿に関しては、国内では様々な取組で規制が強化されてきましたが、近年では事前調査が厳格化されたうえに発注者にも責任が科せられるようになりました。
他方、海外では以下のとおりのとなっており、課題が残っているようです。
アメリカ合衆国:アメリカでは、環境保護庁(EPA)がアスベストのリスク評価を実施し、規制の強化を検討しています。 しかし、全面禁止には至っておらず、一部の使用が継続されています。
欧州連合(EU):EU加盟国の多くは、1990年代から2000年代初頭にかけてアスベストの使用を禁止しています。 EU全体としても、2005年に全面禁止を実施しました。
アジア地域:アジアでは、アスベストの使用が依然として続いている国もありますが、シンガポールや香港など、一部の地域では禁止措置が取られています。

2.改めて主な規制強化のポイント

2-1.石綿含有建材の対象範囲拡大

以前は、一部の建材のみが石綿含有の対象とされていたが、最新の規制では対象範囲が拡大されました。これまで調査対象外だった建材(例:一部の仕上げ材や断熱材)も、新たに含有調査の対象となりました。また、建築年数に関係なく、すべての建材が対象になるようになり、調査における稼働が倍増しました。

2-2.罰則強化とその影響

2022年からの規制から以下の罰則が強化されました。

(1)労働安全衛生法(安衛法)に基づく罰則
 ・事前調査を怠った場合
  → 50万円以下の罰金
 ・虚偽の報告をした場合
  → 50万円以下の罰金
 ・事前調査の結果を報告しなかった場合(一定規模以上の工事)
  → 50万円以下の罰金
 ・労働基準監督署からの命令に違反した場合
  → 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金

(2)大気汚染防止法(大防法)に基づく罰則
石綿含有建材を適切に処理せず、大気中に飛散させると処罰の対象になります。
 ・必要な措置を怠り石綿を飛散させた場合
  → 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
 ・命令違反(改善命令など)
  → 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
 ・虚偽報告や報告拒否
  → 30万円以下の罰金

2-3.建設業法に基づく罰則

建設業者が事前調査を怠ることで、業務停止や指導対象になる可能性もあります。

・不適切な調査・対応が判明した場合
→ 監督官庁(国土交通省・都道府県)から指導・勧告、最悪の場合は業務停止処分

2024年は行政や労働基準監督署の立入・指導件数も増加し、未実施業指導も厳しくなってきました。

3.建設・解体業者が注意すべきポイント

3-1. 石綿調査の実施義務

原則、全ての解体工事について調査が必要です。そのうえで、解体工事80㎡以上、請負金額100万円以上の工事が報告義務が課せられています。しかしながら、街中で見受けられる施工について、調査しているかどうかも分からない現場も多く見受けられるのも実態です。

3-2. 作業時の安全対策と新基準

作業においては、これまでレベル1・2の施工についてのみ、施工計画の作成や提出義務が課せられていましたが、作業レベルに関係なく施工計画書を作成する義務が課せれました。地域によってはレベル3でも一定規模を超える除去工事は届出義務が発生するようになりました。石綿により健康被害が年々増している状況下で規制は厳しくなる一方で、緩和することは考えられません。

4.事前調査・報告義務の変更点

4-1. どのタイミングで調査が必要になるのか

調査義務は着工前までに報告義務が課せされているので、極端に言えば前日まで実施し、報告すればいいのですが、施工を始めるには調査結果を元に施工計画を立て、費用も確定したうえで進めていくと思いますので、少なくとも請負業者であれば施工金額を確定する前に調査を実施する必要があると考えます。

4-2. 報告書の新しい提出ルールと記載内容

事前調査結果を発注者へ事前説明するという義務も追加されています。調査内容を記載した用紙に発注者にサインを頂き、説明者サインを記載したうえで報告書を保管しておくことも義務化されていますが、このことの認識も薄いのも実態です。

5.実務対応:準備すべきことと具体的な対策

5-1. 石綿調査を効率化するツールの活用

法令改正からいくつかのツールが誕生しています。調査に関わる立ち位置は様々で、元請や調査者、分析会社等、欲しい機能は立場によって異なるように考えます。比較している記事もありませすので参考して頂ければと思います。

5-2.コ ンプライアンスを確保するための社内ルール作り

未だ法令改正が浸透していない感が否めない事前調査ですが、やはり社内ルール作りが重要だと考えます。うまく運用している事業者は、着工前の確認事項で事前調査の項目をしっかり入れてありますし、会社としてチェックする体制が整っています。上記で紹介しているツールには案件ステータス管理まで搭載されているサービスもあるので参考にされると良いかと思います。

6.メタラボ石綿事前調査システムなら、規制強化にもスムーズに対応

6-1.最新の法規制に準拠した自動レポート作成

あるべき保存書類、お客様向けの報告書等の帳票がいくつかのパターンで作成出来ます。報告書の写真添付は義務付けられている訳ではないので、写真を添付しない報告書(簡易報告書)の用意もあるので、提出先のお客様によって使い分けが可能となっています。

6-2.直感的な操作で誰でも簡単に利用可能

実際に調査を実施しているメンバーが作成したツールなので、直感的な操作で簡単に利用可能です。スマホ・専用APP等での調査が可能となっています。

6-3.ククラウド管理で複数案件の調査を効率化

調査案件はクラウド管理となっており、全てのデータを共有することが出来ます。一定の場所に格納していることにより、個々の担当者で管理してしている現状で、移動や退職による調査データの紛失するリスクも低下します。何より、という探す「探す」という手間がなくなることは効率化を最大限高めるでしょう。

前田 淳司

1991年 NTT入社、その後2007年に総合解体工事業大手の株式会社前田産業に入社、解体工事業を現場から学び、その後同社常務取締役を得て、2022年株式会社metalab.を設立。 自らが経験した解体工事業の経験を活かし、人口減等の社会的課題を解体業に特化した サービス提供で業界イノベーションを推進したい思いから事業を立ち上げ、現在では解体 工事現場代理人教育や解体施工技士対策講師等も実践している。解体工事業界18年目。

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