目次
1.はじめに:配管工事と石綿は“密接な関係”にある
建物や工場の配管工事に携わる方の中には、「石綿(アスベスト)は解体業者の問題」と思っている人もいるかもしれません。しかし実際には、配管まわりこそ、石綿が最も多く使われてきた分野の一つです。
断熱・耐熱・防音の目的で使用された石綿は、配管保温材・パッキン・セメント管・吹付材など、配管工の手が届くあらゆる箇所に存在しています。
法改正により、解体・改修時には必ず石綿の有無を調査する義務が生じ、配管工としても石綿のリスクを理解し、安全対策を取ることが必要不可欠な時代になっています。


2.配管まわりに使われていた石綿建材の例
配管工が遭遇する可能性のある石綿建材は、以下のようなものです
• 保温材・断熱材(レベル2建材)
配管を巻いている白い保温材。石綿繊維を綿状にしたものや、フェルト状の断熱材など。
• フランジ・バルブ部のパッキンやガスケット
耐熱性が必要な部分に、石綿含有のゴム状パッキンが使用されていた例が多い。
• 煙突・排気ダクトの石綿セメント円筒
ボイラーや給湯器の排気系統で使用されていた。
• 給排水用のセメント管(石綿セメント管)
主に1970年代以前の建物に多く見られる。配管交換時などに発見されるケースも。
• 配管貫通部のパテやモルタル
壁・床を貫通する部分の隙間に、石綿入りの充填材が使われていることがある。


3.現場での石綿曝露リスクはどこにある?
配管工が行う作業の中で、以下のような工程には特に注意が必要です。
- 既設配管の撤去
古い配管を外す際、保温材を剥がしたり、パッキンを破ったりすることで石綿繊維が飛散する可能性があります。 - フランジやバルブの解体
パッキン材が石綿含有だった場合、ボルトを外したときに崩れたり、剥がれた粉が空中に舞い上がるリスクがあります。 - 貫通部のはつり・シーリング除去
石綿入りパテや充填材を削ることで粉じんが発生し、呼吸による曝露が起こることがあります。 - 配管周辺の吹付材の接触(レベル1対応工事が必要)
天井裏や壁の鉄骨部に吹き付けられた耐火被覆材が石綿の場合、接触や振動で劣化・剥離が進行することも。


4.配管工が現場で行うべき石綿対策のポイント配管周辺の吹付材の接触
- 作業対象の建材に“石綿が含まれているか”を必ず確認
• 事前に石綿調査が行われているかを、元請けや施主に確認。
• 調査報告書が無い場合、自ら判断せず調査を依頼。
• 特に1970〜1980年代に建てられた建物では、石綿使用の可能性が高い。 - 作業時はPPE(個人用保護具)を正しく着用
• 粉じんが舞いやすい作業ではDS2以上の防じんマスクを着用。
• 保温材や断熱材に触れる作業は長袖・手袋・保護メガネを着用。
• 作業後は着替え・手洗い・洗顔・うがいを徹底。 - 石綿らしきものを見つけたら“触らず、報告”
• 判断に迷ったら写真を撮って、元請や上司に確認を。
• 絶対に自己判断で除去や削除をしない。
• 石綿作業主任者がいる場合は、指示を仰ぐことが最優先。 - 粉じんが出る作業には「湿潤化」「養生」「飛散防止」をセットで(作業レベルに応じて)
• 削ったり、切断したりする前に霧吹きなどで湿らせる。
• ブルーシートやマスカーで周囲を養生して作業空間を閉じ込める。
• 作業後の片付けも慎重に行い、残材やほこりを清掃・密封。 - 施工前に“社内ルール・現場マニュアル”を整備しておく
• 石綿の可能性がある作業のフローを標準化しておく。
• 曖昧なまま進めることが無いよう、現場ルールを徹底。
• チーム全員が「石綿リスクを知って行動できる」状態にする。


5.配管工は“石綿建材と一番近い位置”にいる
配管は建物の中でも“インフラの血管”とも言える存在です。
その工事を担う配管工は、壁の中・床下・天井裏といった、石綿がひそんでいる場所に日常的に立ち入る職種です。
安全に、そして安心して作業を続けていくためには――
• 「気づける目」を持つこと
• 「触る前に確認する」習慣
• 「守れる装備と手順」を整えること
これらが、配管工自身の身を守り、周囲の安全も守るための重要なスキルになります。
▼石綿調査後、簡単に報告書を作成出来るシステムもございます。是非ご覧ください。


1991年 NTT入社、その後2007年に総合解体工事業大手の株式会社前田産業に入社、解体工事業を現場から学び、その後同社常務取締役を得て、2022年株式会社metalab.を設立。 自らが経験した解体工事業の経験を活かし、人口減等の社会的課題を解体業に特化した サービス提供で業界イノベーションを推進したい思いから事業を立ち上げ、現在では解体 工事現場代理人教育や解体施工技士対策講師等も実践している。解体工事業界18年目。
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